またね!

 明日から違う保育園に異動。いつもは忙しく時差当番で働いているため、顔を合わせた人とだけ、「お疲れさま」のあいさつを交わして、バタバタと勤務先を後にする。

 しかし、今日はここでの勤務も最後。一人ひとり、お世話になった人に感謝の気持ちを伝えて帰ろう。そう思い、子どもたちとかかわっている保育中の忙しい保育士たちに、様子を見ながら声をかけていく。

 そして、1歳児の保育室でー

私は入り口近くにいた保育士に「ありがとうございました。楽しかったです。またどこかで…」と言いながら、あいさつをしていると男児A君が、私たちの間に割って入り笑顔で「またね!」と言った。私は、心の中で、もう会えないかもしれないけど…と思いながら「うん、またね!」と笑顔で返した。

 クラス担任でないフリーの私は、手薄のクラスに入る助っ人保育士である。クラスの雰囲気がわからないので、子どもや保育士の様子を見ながら、迷惑をかけないように、雰囲気を壊さないように注意して保育をする。この1歳児クラスは、職員の連携も丁寧にされて、ゆっくりしている子、急いでいる子にもちゃんと目配せがあり、子どもたちが自由に過ごしているな~と感じていた。

 しかし、それでもさらにゆっくりさんやうっかりさんはいる。私は、その子たちといっしょに生活することを楽しむが、A君はうっかり君という感じで、他の子どもたちとちょつと違うテンポで生活を楽しんでいた。A君は、なんとなくテンポが合う私と気が合うと思ったのか、今までは帰るところで、「バイバイ」と寂しそうな表情になっていた。

 ところが、今日は笑顔で「またね!」と言ってくれた。なにかいつもと違う私の雰囲気を感じ取り、つい出た言葉だったのか。A君の気持ちはわからないけれど、『また会えるよきっと』という意味合いに受け取った私は、さあ、また、元気にがんばるぞ!と思えたうれしい言葉になった。